この記事の概要
永遠の0ラバウル(3)では、経験という能力は何にも代えがたい大きな武器だった。ラバウルの猛者たちは経験で実力を積み上げていた。命を賭して手にしていたのだ。海兵出の士官たちは、経験もないのにプライドだけは高く、下士官や兵から学ぼうとはしなかった。

1. 敵機との乱戦に飛んでくる曳光弾
戦闘機の乱戦になると初心者は敵機なのか味方気なのかわからなくなる。井崎は、小野(一飛曹)小隊長についていくのに必死だった。
曳光弾(えいこうだん、英: Tracer ammunition)は、発光体を内蔵した特殊な弾丸。射撃後、飛んでいく間に発光することで軌跡がわかるようになっている。機銃4発の中に1発入っている。
光りながら飛んでいくので弾道が確認できる。搭乗員はそれを見ながら小銃を修正していく。敵機の機銃にも曳光弾はあるので飛んでくるのが見える。
2. 初めての撃墜
夢中になって、空戦域を遠く離れてしまった。味方機をどこにも見ることが、できなかった。後ろを振り返ると、2機の戦闘機に追尾されていた。背筋が凍るとは、このことだった。
あわてて急降下で逃れようとした。しかしそれは、零戦だった。小野小隊機だった。敵だと思ったのは、味方機だった。その後ろには、林三飛曹機が追尾していた。彼らは、井崎に初撃墜させるため、見守ってあげていたのだ。
小野一飛曹、林三飛曹は、日中戦争から戦っている歴戦の戦闘員だったが、ガタルカナルの戦いで戦死してしまった。
3. ラバウルに多くのエースパイロットが出てきた
戦闘機乗りにとって、空戦こそ最大の勉強だった。学校の勉強と違うところは、学びそこなうと死ぬことだ。学校の試験では失敗すると落第するだけだが、空戦で落第するというのは即、死を意味した。
このようなわけで、ラバウルに多くのエースパイロットが出てきたのは当然だった。彼らは死のふるいにかけられて、生き残った人たちだからだ。
有名な坂井三郎氏、西澤広義氏、笹井醇一氏たちは、ここから出ている。笹井少佐は、海軍兵学校出身だった。このことは珍しく、ほとんどの撃墜王は、兵士からのたたき上げだった。予科練や操練の下士官搭乗員だった。
海兵出の士官が操縦や射撃技術で下士官にかなうはずはなかった。中隊以上の分隊を組む分隊長には、必ず海軍兵学校出身の士官が就いた。
4. 軍の階級社会
実際には、兵学校出身の士官よりも、下士官の方が腕も経験も上回った。どんなに腕がよくても、下士官は中隊以上の分隊長にはなれなかった。
分隊長のまずい判断で、危なくなったことは、枚挙に暇がなかった。空の上では、階級は何の意味もなさなかった。経験と能力がものをいう世界だったのだから。
経験という能力は何にも代えがたい大きな武器だった。ラバウルの猛者たちは経験で実力を積み上げていた。命を賭して手にしていたのだ。海兵出の士官たちは、経験もないのにプライドだけは高く、下士官や兵から学ぼうとはしなかった。
ところが笹井中尉は違っていた。積極的に坂井一飛曹などの下士官と混じっていった。部下に教えを請うことを気にしない人だった。坂井一飛曹にも階級を超えた友情のようなものを笹井中尉に感じていた。そのため笹井中尉の腕がみるみる上がっていった。
やはり謙虚さが人を強くさせるのだ。
海軍は下士官や兵に対しての冷遇はひどいものがあった。士官は個室で銃兵付きの至れり尽くせりだったが、下士官以下は大部屋で雑魚寝だった。宿舎は遠く離れていて両者は交流がなかった。
食事にも天と地ほどの開きがあった。航空兵だけは、食事に恵まれていたが整備員になると開きがあった。軍隊は徹底した身分階級だった。
軍艦にも士官専用のガンルームがあった。
このような隔たりとは、東洋的ではない。海軍の模範は、イギリスだったからすべてイギリスをまねたに違いない。
坂井三郎氏でさえ少尉になるには、10年以上かかっている。兵学校卒業者はすぐに少尉になる。官僚のキャリアとノンキャリアみたいなものだ。兵からたたき上げられた特務士官は、兵学校卒の士官よりも一つ下に見られた。
それが海軍だったのだ。これじゃ勝てるわけがない。戦場は現場を経験したものじゃなきゃわからないからだ。頭でっかちの連中が指揮した戦いだったのか。
井崎の最終階級は飛曹長だった。終戦で一階級上がったものだった。これをポツダム兵曹長と呼んだ。
5. 零戦の戦闘能力
太平洋戦争初期の零戦の力は圧倒的だった。
格闘戦になったら絶対に負けなかった。巴戦に入る前に3度旋回する前、敵機は撃ち落された。巴戦というのは相手の後方に付こうとしてぐるぐる回りながら戦うこで、西洋ではドックファイトと呼ばれていた。
アメリカ軍の撃墜された飛行機から書類が出てきた。
職務中に避退してもよい場合:
雷雨に遭遇したとき。ゼロに遭遇した時と記されていた。
6. チャーリーバーンという豪州パイロット
「ゼロファイターは本当に恐ろしかった。信じられないほど素早く、その動きはこちらが予測できないものだった。まさに鬼火のようだった。俺たちは戦うたびに劣等感を抱くようになったんだ。そしてゼロとは、空戦をしてはならないという命令が下ったんだよ」(永遠の0から引用)
ゼロに乗っている者は、人間ではないと思っていた。悪魔かマシンだったのではなかったかと思われていた。零戦搭乗者をデビルと呼んでいた。ラエの熟練搭乗員たちは、本当に強かったから。デビルという表現は正しかったのだろう。
連合軍には、零戦と互角に戦える戦闘機がなかった。イギリス空軍の誇るスピットファイヤーも零戦の敵ではなかった。零戦と格闘戦で勝てる戦闘機は存在していなかった。零戦は、車もまともに作れない三流国が作った奇跡の戦闘機だった。
若い設計者たちが死ぬ気で作った傑作機だったが、打たれれば火もふくし撃墜もされる。零戦の弱点は、防御が弱いところだった。乱戦になれば、流れ弾に当たることもある。奇襲には、かなわなかった。
7. 宙返り編隊
3名人による西澤、坂井、太田による3度の宙返り編隊。敵から砲撃がなかった。砲撃できる範囲にいたにもかかわらず。彼らの騎士道精神とユーモアだった。日本だったら士官たちが打て!打て!と絶叫していた。太田一飛曹は「奴らは、大人だったよ」と敵の度量を認めていた。
ラエが空襲に遭ったとき、手紙が落とされた。「先日の編隊宙返りは見事だった。この次来られるときは歓迎する」と。
ラバウル航空隊の技量は掛け値なしに世界一だった。
まとめ
井崎源次郎の初めての空戦
軍の階級社会、空の上では何の役にも立たない
零戦の戦闘能力
紹介

作品紹介
546万部突破の歴史的ベストセラー作品、百田尚樹著『永遠の0(ゼロ)』がオーディオブックで登場!
司法浪人生である佐伯健太郎が、フリーライターである姉・佐伯慶子と共に
太平洋戦争の際に特攻で戦死した祖父・宮部久蔵の人生を解き明かしていく、壮大な愛の物語。
オーディオブックでは、人気声優の江口拓也、櫻井孝宏、豊口めぐみ、そして女優の小芝風花ら豪華出演者により
ストーリーを忠実に表現し、音のみの世界によって想像力をより掻き立てます。
映画、テレビドラマ、漫画でも親しまれる人気作を、より原作に忠実に制作したオーディオブックでじっくりとお楽しみください。
【あらすじ】
物語の主人公・佐伯健太郎は、祖母の葬儀の日に実の祖父・宮部久蔵の存在を知らされる。
零戦パイロットとして天才的な操縦技術を持ちながら、生きることに執着し、
仲間から「臆病者」と蔑まれた宮部の実像を調べようと、健太郎は彼を知る人たちを訪ね歩く。
「家族の元に帰る」ことを妻・松乃と娘に誓った宮部がなぜ特攻を志願したのか、
その謎が健太郎の手により解き明かされていく。
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