この記事の概要
永遠の0ガダルカナル(2) では、海軍兵学校の士官たちはミスを犯しても昇進していったが、下士官や兵たちは道具扱いだった。幕僚たちにとっては、下士官や兵たちは鉄砲の弾と同じだったのだろうか。

1. 帝国海軍の小出しの戦力
アメリカの海軍記念日に、南太平洋上で航行できる空母が一隻もなかったほど危機的な状況だった。史上最悪の海軍記念日と呼ばれた。このとき、アメリカ軍のガダルカナル守備隊は撤退を考えていた。
戦後の戦史家たちは、このとき、日本軍の全精力をつぎ込んでいれば、ガダルカナルは奪還できたと言っていた。帝国海軍は、戦力を小出しにして、千載一遇の機会を失ってしまった。
世界最大の戦艦大和は、トラック等に温存した状態だった。アメリカ軍はこの剣が峰に全精力をつぎ込んできたのだ。
山本長官と幕僚たちは、戦艦大和の中で音楽隊の音楽を聴きながら、第一線の部隊へ命令だけを下していた。
山本はフリーメイソンだという噂がある。アメリカの益になることを考えていたのだろうか。
水兵たちが大和を大和ホテルと呼んでいた。前線で戦う兵士は、必死で戦っていた。
2. 田中頼三
田中頼三司令官は、果敢な戦いを行った。敵の巡洋艦を打ち破っている。大きな戦果を挙げた田中司令官はこの戦いの後、わけのわからない理由で左遷させられている。
これまでの戦いを聴いていると、作戦司令部は、初めから勝とうという気がないようだ。山本が真珠湾で攻撃をかけ、アメリカ全体に戦争を支持させた。
勝機の機会を何度も潰している。戦果を挙げようなら左遷させる。アメリカ海軍からは、勇猛な指揮官として最大の賛辞を与えられていたにもかかわらず。
初めから負けることが前提だったのだ。
海軍兵学校の士官たちはミスを犯しても昇進していったが、下士官や兵たちは道具扱いだった。幕僚たちにとっては、下士官や兵たちは鉄砲の弾と同じだったのだろうか。身分差、いつの時代、どの組織にも根強く存在している。
「大本営や軍司令部の連中は人間ではない!」この時井崎は声を上げて叫んでしまった。
3. 制空権
制空権が奪われ、二線級の戦艦しか出撃させない状態で日本陸海軍は、補給がままならないところで戦ったのだろうか。ガダルカナル飛行場奪還のため、ラバウル航空隊が送られた。このため、ラバウルが搭乗員の墓場と言われるようになった。
ラバウル航空隊は、ガダルカナルの戦いが始まって以降、急速に消耗していった。出撃は連日続きた。その度に、未帰還機が出た。搭乗員で最も戦死者が多かったのは一式陸攻の中攻隊だった。
中攻隊は出撃すれば半分の確率で撃墜されるのだから、生き残ることを諦めているように見えたが、最後まで泣き言を言わず勇敢に戦った。
零戦隊の中にも未帰還機が出てきた。搭乗員の寝室には、主(あるじ)のいなくなった私物が残った。それらはまとめて内地の家族のもとへ送り返された。遺品の中には遺書もあった。
4. 夕食の食堂
搭乗員の中には遺書を書くものとかかないものがいた。仲間を失って悲しみを感じるのは戦闘直後ではなく、夕食の食堂だった。
朝一緒に飯を食った仲間が夜いないのだ。夕食には必ず全員分の食事が用意される。食堂ではだれがどこに座るかは決まっていなかったが、習慣で決まる位置があった。夕食の時間に空いている席があれば、その男は未帰還だった。
9月のある日、東野二飛層が「一度でいいから美味しい大福が食べたい!命をかけて戦っているんだ。一度くらい大福を食べさせてもらってもいいだろう」と大きな声で言った。
井崎もそれを聞いて大福もちを想像してしまった。大福もちなどラバウルに来て食べたことはなかった。
その日の夜大福もちが並んでいた。東野二飛層の声を聞いた烹炊員(ほうすいいん)たちが一生懸命こしらえてくれた。しかし、夕食の席に東野二飛層の姿はなかった。
5. 連日往復2千キロ
日本航空隊が誇る名人級の搭乗員たちが帰らぬ人となった。こんなことは考えられないことだった。連日往復2千キロを飛んで戦っている。死と隣り合わせの疲労は小さくはなかった。
7時間もの間、飛行機に乗り続け、要撃に上がった戦闘機と電探(レーダー)に戦いを挑まなければ何らなかった。多くの搭乗員が限界に近い状態で戦っていた。疲れから来るミスで撃墜された搭乗員も多くいた。
笹井中尉が撃墜されたときも中隊長として5日連続出撃していた。十分な休養さえ与えられていれば死ぬことがなかった搭乗員が多くいたはずだ。
出撃しない日はとにかく睡眠をとった。井崎は宮部からこのことを教えられた。「井崎、いいか、よく聞け、時間があれば休め。たっぷりだべてよく寝ろ。どれだけ休めるかが戦いだ」井崎はこの言葉を忠実に守った。
まとめ
帝国海軍は、戦力を小出しにして、千載一遇の機会を失ってしまった
下士官や兵たちは道具扱いだった
夕食の時間に空いている席があれば、その男は未帰還だった
日本航空隊が誇る名人級の搭乗員たちが帰らぬ人となった
紹介

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司法浪人生である佐伯健太郎が、フリーライターである姉・佐伯慶子と共に
太平洋戦争の際に特攻で戦死した祖父・宮部久蔵の人生を解き明かしていく、壮大な愛の物語。
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【あらすじ】
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零戦パイロットとして天才的な操縦技術を持ちながら、生きることに執着し、
仲間から「臆病者」と蔑まれた宮部の実像を調べようと、健太郎は彼を知る人たちを訪ね歩く。
「家族の元に帰る」ことを妻・松乃と娘に誓った宮部がなぜ特攻を志願したのか、
その謎が健太郎の手により解き明かされていく。